ある日、夢を見ました。
とてもよく晴れた空の下で、家康様が倒れる夢でした。忠勝様も既に倒れ伏しており、朽木のようでありました。
家康様が倒れたその場所に、花が咲きました。
その花はきいろく淡く光っていて、見る人の気持ちをほうっと暖かくさせるような色でした。
ぽつり、ぽつりと花は咲いてゆきました。忠勝様の背中にも咲きました。
きいろの花畑は広がってゆき、いつか世界を覆いました。いつもひとの笑顔とともにある花となりました。
ひとが産まれる時に贈られる花となりました。愛を伝える時に贈られる花となりました。絆と平和を謳う花となりました。
私はただ泣きながらそれを見ていたように思います。というのも、目を覚ましたとき、私の頬は冷たく濡れていたからです。
(あなたの絆は世界を救わない)
「家康様の夢を見ました」
「ワシの?」
秋の空気はよく澄んで、家康様の声をまっすぐに通します。夏の残り火のように家康様は笑いました。
「の夢にワシが出たか、そうかあ」
「家康様がきいろい花を咲かせる夢でした」
「ふふ、ワシは花咲か爺か」
朝餉の際の、一寸した雑談でした。
家康様がおなくなりになられた時は、きっと本当にきいろい花が咲くとおもいます。
さすがにその言葉は、口にはできませんでしたが。
あの花は、豊臣の地にも咲くでしょうか。四国の地にも咲くでしょうか。かつて袂を別った人々の、なきがらが眠る地にも咲くでしょうか。
きっと咲くでしょう。咲かないのであれば、私が咲かせてみせましょう。
「その夢はきっと、の心に絆が咲いた夢だ」
私をまっすぐに見つめて家康様は言いました。存外、茶色い瞳をしておられました。何かに焦がされたような色でした。
「また、絆ですか」
「はは、言われてしまったな。……だが……ああ、絆だ。たいせつなものは、絆だよ。」
あの日の家康様の瞳の色は覚えているのに、どんな顔をしていたかは覚えていないのです。
一面に咲き誇る黄菖蒲を目の前にして、思わず眩暈を感じ、あの日に戻ったかのような錯覚を覚えました。
ああ、あれから何年が経っても、この色を目にして思い出すのは家康様、貴方のことです。
あの夢を忘れられません。あの瞳が忘れられません。
私はここで花を植えながら、私の植えた花が、貴方が咲かせた花が、人々の心に絆を咲かせることを祈りましょう。