向かい合っている。己と。向き合っているつもりだった。
いつしか己の銀髪は飴のように輪郭を溶かし螺旋を描いた。宙に描く文様をただ眺めている。蝶はやがて見覚えのある形となる。ギギナ。ギギナだ。そう、己とはギギナであった。戦士。
ギギナがつるぎを抜いた。己も抜いた。刃と刃の鳴る音が美しい。高音は脳を溶かしセイレーンの歌声となる。
喜びに。打ち震える。求めていたものだ。これが。唇が弧を描く。向かい合ったギギナも笑った。
瞳を開ければそこは暗闇であった。
ユラヴィカは息を呑みかけて押し止め、状況を把握しようとする。不覚。思った以上に深い眠りに就いていたようだった。
完璧な暗闇ではない。陽に透かされた血管が視界を駆けていた。人間の掌だ。敵か。そう思った瞬間全てを思い出した。
「チェデック」
指先がぴくりと動き、掌が退かされた。
「起こしちまったか、すまねえ」
「いや」
身体を起こし、浮付く感覚を静める。らしくもない。熟睡していたというだけではない。すぐ側に他人がいて、しかもいつ敵が襲撃するとも分からない野外だ。
溜め息を吐いて目頭を押さえ、ふと気付いた。
先ほど己の目を覆ったチェデックの、掌の温度。冷たかった。否、己の顔が熱を持ちすぎていたのだ。道理で頭が重い。己の不甲斐無さに苛立ちが募った。最強の戦士が体調不良など。唾棄すべき軟弱さである。
「なんだか、あんたが」
言い難そうにチェデックは切り出した。体調のことを指摘されるのかと思うと耐えられなかった。気高きドラッケンの魂に恥じるべき惰弱を、他人に晒したのだ。
「あんたが、泣いてるように見えたんだ」
ユラヴィカは今度こそ言葉を失った。